S1 サプリメントの効果と課題
ビタミン、ミネラル、フィトケミカルなどのサプリメント使用の臨床試験も多くなり、メタ分析の論文もあらわれるようになったが、効果に関しては論議が絶えない。対象となる症状や投与量に関しても、はっきりしない部分が多い。本セッションでは皆の参考になるようにサプリメントの機能評価と診療経験の深い先生方に現場での体験を語っていただく。また、抗酸化能など試験管レベルでの評価や動物実験で効果が示されているものも多く、抗加齢検査や臨床試験による評価をしたものなども紹介したい。これらサプリメントの機能は特定保健用食品として扱われているが、いわゆる健康食品との境界は紛らわしく、栄養素に期待される生理的機能をうわまわる薬理機能については機能栄養学としてまとめるのが望ましい。規制や表示、診療点数などの問題も絡めて皆さんと検討したい。



 S2 遺伝子、細胞制御と抗加齢
Sir2の発見により、寿命の制御メカニズムに関する考え方が大きく変わろうとしている。近年、これまでには知られていなかった遺伝子発現やタンパク質の脱アセチル化、ゲノムの修復・維持機構、幹細胞のエイジングなどが明らかにされつつある。抗加齢の方法論を論じるときにも、寿命や老化のメカニズムを正しく理解することにより、加齢のプロセスそのものに介入することにより抗加齢を科学的に組み立てていくことが大切であると考えられる。本セッションは、分子レベルでの加齢・老化のメカニズムに関して、最先端で活躍されている先生方をお招きし、遺伝子レベルでの老化制御、分子レベルでの老化制御、細胞生物学レベルでの老化制御、そして個体レベルでの加齢・老化の制御メカニズムから抗加齢を討論することを目的としている。



 S3 運動とアンチエイジング-基礎-:運動による身心への有益な効果
“運動の抗加齢効果”に注目が集まるゆえんは、老化に伴う動脈硬化症、骨粗鬆症、糖尿病、認知症などのリスクが、運動することで低下しQOLを高め、いわゆる“サクセスフル・エージング”の享受が期待される点にあろう。事実、適度な運動は運動器系をたくましくするだけでなく、脳にも作用し、運動機能と共に認知機能をも向上させる。その機構は依然として不明な点が多いが、細胞レベルではBDNF、VEGE,IGF-Iなどの発現と機能が高まり、筋、血管、神経細胞の増殖が高まり、抗酸化能や動脈伸展性が向上し、運動機能や認知機能が向上することから、まさに、身心の統合的な発達を促すことで、元気さを保つ運動効果が見えてくる。
 今回は、老いてもたくましくできる運動効果を運動器系や脳への効果、すなわち身心の両面から見つめながら、普段は別々に論じる共通機構に目をやり、有機体として働く我々の身心と運動の関係について考える機会となれば幸いである。



 S4 日常食で健康長寿は可能か?
健康長寿は人類の永年の夢、しかし男女の平均では寿命が世界一の日本人も、寝たきり認知症は、増加し夢の実現にはなお遠い。
「人は血管と共に老いる」が二大血管病の、心筋梗塞と脳卒中の共通の原因ともなる糖尿病は、日本の現代の食環境の変容で益々増加しているが、それを克服する日常食はどうあるべきか、最先端の遺伝分子学的研究から伺える。
さらに、脳卒中は高齢者のQOL障害の大きな要因だが、長期間の大規模疫学調査で日本人自体のリスクの分析が進展し脳血管障害を予防しQOLを維持するのに良い日常食のあり方も見えて来た。
また、世界調査のまとめと生活習慣病の多発で寿命が日本人より30年も短い豪州のアボリジニの調査から、人類が誕生以来最も長く経験した食生活の共通の栄養源こそ血管老化を防ぐ日常食である事も分って来た。
日本人に特徴的な遺伝子多型、特有の食習慣や世界調査との比較から日本人はどのような日常食で健康長寿になれるかを考えたい。



 S5 免疫と老化の最前線
  生活の質を高く保ちながら健康に過ごすことをアンチエイジング医学のひとつのゴールとするなら、その達成には免疫力の維持ならびにその強化が不可欠である。しかしながら、スーパーシステムとしての免疫を評価することは限られた施設でしか行われてないことから、この検査の普及に期待が寄せられている。本シンポジウムではルイ・パストゥール医学研究センターの宇野賀津子先生にインターフェロン・サイトカインシステム測定の有用性についてご講演いただく。免疫を強化する為の対処法も少人数を対象にした予備的検討の成果から、多数の実施者の実績はあるものの多くの専門家が受け入れない過渡期のものまであり免疫療法の現状はさまざまであるが、将来的なプロバイオティクス応用の可能性をヤクルト中央研究所の志田 寛先生にお願いした。老化に伴う免疫機能の低下は、感染症だけでなく癌の発生や進展にも大きな影響を与える。京都大学の湊 長博先生には免疫能の低下とがん化のメカニズムについて今後の展望も含めて語っていただく。本シンポジウムでは、免疫機能の制御に関してそれぞれの立場から御講演していただき、抗加齢と免疫について考えていきたい。



 S6 東洋医学によるアプローチ
  抗加齢医学への関心は、年々高まっています。本シンポジウムでは東洋医学の視点から抗加齢に対するアプローチをご紹介させていただきます。演者の先生方は西洋医学の第一人者であり、かつ東洋医学に造詣が深く、それぞれの立場から抗加齢をどうとらえ、対策を立てておられるのかをお話しいただきます。まず広島国際大学教授で広島大学附属病院漢方外来担当の中島正光先生には総論として「漢方診療におけるアンチエージング」をお話しいただきます。第二席は京都府立医大免疫・微生物学教授を長く務められ、本年4月より明治国際医療大学に移られた今西二郎先生より「鍼治療およびアロマセラピーによる認知症対策」を、そして第三席は大阪大学漢方医学寄附講座准教授の西田愼二先生より、心療内科医の立場をふまえて「男性更年期外来患者の漢方治療」をお話しいただきます。抗加齢を接点とした西洋医学・東洋医学双方からのアプローチが期待されます。



 S7 Inside Out, Outside Inから見たアンチエイジング
       −感覚器の老化とその予防−
  アンチエイジングあるいはヘルスエイジングへ向けたアプローチが多くの臨床科で試みられている。加齢とともに特徴的に生じる病態を解析し、その病態を改善あるいは軽減しようとする試みである。特に、カロリー・リストリクションや抗酸化物質の摂取による介入が奏功することが科学的に実証され始めており、アンチエイジング科学は興味深いステージに入りつつある。今回は、そのなかで、眼科、皮膚科、耳鼻咽喉科の扱う感覚器にテーマを絞り、老化とその予防へのアプローチを取り上げてみた。病態を的確に把握し介入することにより、quality of lifeが著明に改善する例が各科から紹介され、他科の方々にも大いに参考になるものと思われる。
  各人にとって加齢は避けてはとおれない道である。叡智を持って「加齢現象」に医学的あるいは健康科学的に適切に対応し、quality of lifeを高めたいものである。



 S8 GH・エストロゲン・メラトニンの意義
  GHは性ホルモンとともに成長・発達段階における身体発育に大きく関与するが,成人や加齢における役割については一定の見解が得られていない。そこで,大山健司教授に抗加齢ホルモンとしての現時点でのコンセンサスを述べていただく。また女性の健康長寿にはエストロゲンが不可欠であるが,高齢になればなるほどエストロゲンリスクには差があり,何歳まで安全であるかを暦年齢では一律に論ずることはできない。そこで太田より,高齢者におけるエストロゲン療法の可否について論じてみたい。
  メラトニンは主として松果体においてセロトニンから含成・分泌される日内変動を有するホルモンとして有名である。しかし最近の知見として,メラトニンとインスリン,糖脂質代謝との関係が見出されている。そこで,西田 滋教授には新たなメラトニン作用について講演いただく予定である。また服部淳彦教授には既知のメラトニンの効果とともに今後期待される効果について述べていただき,メラトニンを増加させる食生活を中心とするライフスタイルにもふれていただく予定である。



 S9 脳の老化と栄養
  近年、アンチエイジング医療が急速に普及し、わが国では体力的のみならず精神的にも健康な高齢者が増えつつあると思われる。しかしながらアルツハイマー病をふくむ脳の病的老化、あるいは生理的老化の機序の多くは解明されていないのが現状である。認知機能の低下については脳血流の低下、あるいは脳の低栄養による進行の可能性も考えられている。また脳の動脈硬化性疾患の主因であるメタボリックシンドロームにおいても、診断基準も確立していない。本セッションではこれらの問題にアプローチすべく3名のエキスパートを演者とした。伊賀瀬道也先生からは抗加齢ドックによる認知機能低下の早期発見・早期治療について、溝口徹先生からは脳の低栄養による老化促進について、大櫛陽一先生からはメタボリックシンドロームと脳卒中の関連などについて講演してもらう。本シンポジウムで、脳のアンチエイジングに関する有意義な知見が得られるものと確信している。



 S10 男性ホルモン研究最前線 今年の話題
テストステロンは長い間男性ホルモンと呼ばれている。筋骨隆々といった男の骨格や性衝動など、性差を象徴するホルモンとしてのステレオタイプ的な見方が定着してきた。一方最近テストステロンは女性でも実はかなり働いていたり、また健康長寿に関係するという疫学研究が多数報告されている。このセッションでは、筋肉への作用、あるいは性衝動の性差といった、「男性ホルモン」についての新しい知見と、血管の健康や生きがいに役立つテストステロンの新しい作用、さらにDHEAの臨床を含めテストステロンのupdateを紹介したい。



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 S11 脳神経のアンチエイジング:脳の活性化を考える
抗加齢医学において脳神経のアンチエイジングは重要である。老化を促進する危険因子として精神ストレスは代表的であるが、いかにストレスに打ち勝って、やる気を出させるか(動機付けや行動変容)についても、近年いくつかの方法が提案されている。また脳の活性化をどのように評価するか、といった議論がある。本セッションでは脳の活性化をP300という脳波反応を利用して評価する方法や、血中のセロトニン量により評価する方法を紹介する。噛む事やリハビリテーションによる脳神経の活性化について議論したい。



 S12 ミトコンドリアから探るアンチエイジング
Hermanらは50年前に、老化の原因に対し、フリーラジカルセオリーを打ち出した。以来、数々のこのセオリーを指示する論文が報告されている。老化とミトコンドリアとの関連の報告が多く行われつつある。老化研究では、細胞の加齢に伴い、ミトコンドリアDNA のcommon deletionが増大することが報告されている。本セッションでは、4名の著名なミトコンドリア関連研究者を招聘し、老化とミトコンドリアとの関連を浮き彫りにし、ミトコンドリアから探るアンチエイジングについて討議する。



 S13 加齢関連疾患におけるAGEsの意義
糖化反応後期生成物(AGEs)は糖尿病合併症や動脈硬化などの生活習慣病のみならず、様々な加齢関連疾患で蓄積が増加することが明らかとなってきた。特に、1型糖尿病の血糖コントロールを6.5年にわたり厳格に行うと、その後血糖コントロールが次第に悪化しても、少なくとも8年間は細小血管症の進展が抑制できるというhyperglycemic memoryの説はAGEs病因仮説と一致することが知られている。さらに最近では、食品に含まれるAGEs(メラノイジン)も糖尿病を悪化させる因子として報告されており、AGEs研究は今後さらに、加齢性疾患との関与が注目される。しかし、生体におけるAGEs研究の歴史は以外と浅く、AGEs測定法や、研究に用いるAGE蛋白の品質など、いくつかの問題点も指摘されつつある。今回、分子レベルで明らかとなってきたAGEsと加齢関連疾患との関わりについて議論したい。



 S14 血管のアンチエイジング- 血管から老いないために
加齢に伴って血管は老化し、様々な心血管イベントを発症することとなり、「ヒトは血管から老いる」といわれる。建物でも最初に壊れるのは水回りであり、修理には大規模改修とコストがかかる。
細胞生物学や大規模臨床研究の成果などによって、血管老化のメカニズムの理解も進みつつある、また老化した血管を代替するための侵襲的治療法の進歩はめざましいものがある。
本シンポジウムでは第一線の先生方をお招きし、内科サイドから血管老化のメカニズムの基礎的部分、外科サイドからはバイパス手術や血管新生療法などの最新の治療法について概説したい。
2007年時点で日本の高齢化率は21%を突破し、かってない超高齢社会を迎えている。このシンポジウムが今後の研究や臨床の進歩の一助となれば幸いである。



 S15 アンチエイジングを強める運動療法
運動は「抗加齢期」を過ごすための手段
  多くの人は、年をとりたくないと望みます。実際に年をとりたくないと望む訳ではなく、年齢は重ねても若々しくありたいと思うようです。
不老に関する「おはなし」は、書物や映画などにもみられます。当然のことですが、私たちは、不老を体験することはできません。
  この数十年で、急激な医学の進歩や栄養状態の改善がありました。私たちの2−3世代前までは、先輩たちのいうことや書物を通して「老いる」ということを学び、先輩の生き様を真似することによって、うまく年をとり、人生を過ごせていたようです(決して、昔は現代社会より生きやすかったといっているのではありません)。
  最近は、「年寄りじみた」ことを言って若者を諭すお年寄りが減少したように思います。ほんの2−3世代前までは「生き方、死に方」の手本とすべき先輩たちの人生のスパンは、我々より短く、若年、壮年、老年の区別が今より明確であったように思われます。しかし、最近は代々繰り返されてきた「ヒトの一生」が微妙にずれてきています。現代社会は、少し大げさな表現かもしれませんが、これまで誰も経験したことがない、先輩たちの生き方を真似ているだけでは人生を生ききれない高齢化社会に突入しています。この高齢者に関して、姥捨て山などいう習慣によって、当時は現代ほどの高齢者を対象にしていなかったでしょうが、食料不足の時代を生き延びた地域もありました。
  今後、とりあえず、しばらくの間は、多くの人々が2−3世代前の先輩たちより長寿となりそうです。すなわち、我々は先輩たちより少し長い間、「若い」と考えられる時間を過ごす必要があるようです。これは、現代を生き抜く人類に課せられた使命かも知れません。運動の継続は、この抗加齢期(ヒトの一生の内の、いつ頃の「期」になるかは明確に断定できませんが)をうまく過ごす手段の一つであることは、間違いないと考えます。



 S16 見た目のアンチエイジング(1) 顔面の老化度評価と予防
美容医療は高いニーズに支えられて拡大してきているが、観血的な美容外科手術から非観血的なレーザー治療、フィラー、ボツリヌストキシン、ピーリング、さらには化粧品、食、サプリメントまで、非常に広範囲に及ぶ方法により、多方面から行われるようになってきた。その健全な発展に欠かせないのが、その効果を客観的に評価する方法である。すなわち、各人が独自の方法、基準で評価した結果をもって、それぞれの効果を謳う状況では胡散臭さを払拭できず、結果的には美容医療全体の信頼性が揺らいでしまいかねない。そこで本シンポジウムでは、近年大きく進歩した皮膚老化の計測方法を紹介してもらい、評価基準の統一の必要性を議論したい。また光老化の予防に欠かせないサンスクリーン剤については、その機能の評価法と効能について、食さらにはワインの抗光老化の効能についても興味あるお話を伺いたいと思っている。



 S17 見た目のアンチエイジング(2) 顔と体の老化対策
外貌や体型の変化は、たとえ身体の不調がなくても、加齢を強烈に実感させるものである。美容医学の進歩は特に低侵襲治療の急速な普及をもたらし、大きな潜在的ニーズを表面化させている。一方、日常生活の工夫で予防を目指す新しい取組みも始まっている。本シンポでは、しわ、たるみや体型の加齢変化の最新の予防・治療アプローチに取組む3名のエキスパートをお迎えした。まず山下理絵先生(湘南鎌倉総合病院)には、抗加齢美容医学の最近のトピックスについて、特にしみ、しわ、脂肪、あるいは毛髪に関する治療法のアプデートをご報告いただく。目崎高広先生(榊原白鳳病院)には、昨年わが国で美容治療目的にも承認されたボツリヌストキシンを用いた治療の基礎から臨床までを明快にご解説いただく。篠崎彰大先生(ワコール人間科学研究所)には、加齢による見た目の体型変化について、科学的な分析からその予防の新しい取り組みまで、ご紹介いただく予定である。